ライフ・オブ・パイ専用ザク格納庫

映画ライフオブパイの超長編ネタバレ/その他映画のレビュー/あと気がむいたときに羽生くんを応援

ライフ・オブ・パイ

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●オープニング・テンプレ●●●●●●●●●●●●●●●●●●
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このブログは映画『ライフ・オブ・パイ』の、激ネタバレ レビューです。
映画をまだ観ていない方はご遠慮ください。
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すでに作品を鑑賞済みの方は、
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↓スタート
2013年10月30日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131030
2013年10月31日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131031
2013年11月01日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131101
2014年01月25日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20140125

…以下、カレンダーか記事の一覧から
2014年4月〜 の順にお進みください。.
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【李安のギャラリー】
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『ブロークバックマウンテン』のときもそうだったけれど、抽象的テーマを扱うとき、アン・リー監督は補色を効果的に使う。『ブロークバックマウンテン』では赤と緑、『パイ』ではオレンジとブルー。
しかも補色の画面は、主人公のイマジネーションの世界。
これが終わったら『ブロークバックマウンテン』のレビューも書きたいな。書く予定でいる。
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映像美映像美とさんざん言われていますけど、アン・リー監督の美意識が存分に発揮されているのは実は漂流前の部分だと思うんです。漂流中の『虎の話』の中の映像美は、敢えてタッチを変えてあります。普段 油絵を描いている画家が、意識的にカラーインクで描いているみたいに。別世界なんですよ。パイの創作の中だから。そっちも綺麗だけれど、パテル家の中庭や、中年パイとライターの語らいの、落ち着いた色合いの方が、アン・リー監督本来の色使いだと思うのです。
だから、ワンシーンでもカットしてほしくないわけ。
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プールサイドに花が咲いたような水着姿のパリジェンヌ達、ルノワールの最高傑作『船遊びの昼食』を彷彿とさせる。構図や色彩が似てるとかじゃなくて、明るくて華やかで、同時にけだるくて、ちょっとアンニュイ。

●『舟遊びの昼食』1882
オーギュスト・ルノワール(1841-1919)


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ルノワールの最高傑作といわれる。ワシントンのフィリップス・コレクション蔵。日本橋高島屋にフィリップス・コレクションが来たとき見に行った。凄かった。画面から光が射してくるようで。それまで複製画ばかり見ていて「こんなボワボワした毛糸の固まりのような絵のどこが…」と侮っていたのを土下座して謝りたくなった。
が、しょっぱなにこの最高傑作の原画を見てしまったので、初期のころのルノワールにはいささか不感性気味。やっぱ初期のルノワールは毛糸ボワボワな気が。
※プールつながりで、子供の頃のパイが水泳を習うシーンも絶対必要な、すごく重要なセリフが含まれているので、カットしちゃだめ〜。カットしていい無駄なシーンは一つもありません。
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高校生のパイが橋梁で本を読むシーンは『ブロークバックマウンテン』のあのシーンと敢えてかぶらせてある。と思う。
(鑑賞済みの人なら、イニスのあのシーンだってすぐわかるはず)
どっしりした黒の使い方がルオーの絵みたいで、空が哀しいほど明るくて、スーラやマンギャンみたいな明るさだ。
後期印象派〜野獣派が好みなんだろうか、アン・リー監督。
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ジョルジュ・ルオー(1871-1958)
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ステンドグラス職人だっただけあって、黒の輪郭線の力強さがハンパないです。線を廃した印象派から隔世の感があります。キリスト教をテーマにした、十字架のキリストや聖者のイコン風の絵を多く描いています。
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ちなみにコレ。ブロークバック・マウンテンのオープニングに似てると思ったが、偶然の一致か? 思い過ごしか?

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※タイトル制作年メモし忘れ。すいません。
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●ジョルジュ・スーラ(1859-1891)点描画の技法で有名。明る〜い。

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●アンリ・シャルル・マンギャン(1874-1949)
あかん、マンギャンがネットで冷遇されとる。知名度低いんかな。
フルネーム「アンリ・シャルル・マンギャン」とか「マンギャン 画家」とかで画像検索しても、代表作すらヒットしないぞ! かわりに、マチスシスレーや他のフォーブの画家の絵ばっかり出てきよる。
仕方がないので手持ちの「マンギャン展 図版」から紹介。
※画集をガラケーで撮ってうpするという迂遠な方法をとっております。画質悪いから著作権云々は大目に見ていただきたいのだが、問題アリだったら速攻削除します。
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『午睡、揺り椅子』1905年

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『葡萄の房を持った女』1905年

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ハレーションを起こしそうな陽光を描かせたらこの人の右に出る者は無かろうと。
スーラの単調な点描より、セザンヌにインスパイアされた面で塗り分けるタッチが好きだ。陰影の色彩豊かさが、眩しさだけでなく肌を焼く日差しの熱気まで伝えていると思います。マンギャンの補色は黄色と藤色、緑陰と紫。
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『海辺の女』1906年 エルミタージュ美術館

マンギャンの最高傑作と誉れ高い。80-81年の「エルミタージュ 19-20世紀フランス絵画」展、84年の「エルミタージュ、プーシキン 後期印象派から立体派まで」展と 二度原画を目にする幸運に恵まれました。ふさぎがちな気持ちが一気に明るくなる理屈抜きで綺麗な絵。南仏海岸に滞在中のこの時期はマンギャンのヴィンテージイヤーだったようです。
※同じ絵に複数タイトルがついていて、画集によっては『カヴァリエール湾の朝』『朝』等、別のタイトルで紹介されている場合があります。
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『アトリエでの休息』1919年

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カーテンを閉め切った室内でも、これほど明るく事物が見えるのだから戸外の日差しはどれほど強烈なことか、
んで、こういう室内は空気がとろけるほど暑い。キャンバスに日差しや暑さを描く技法。
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だから、アン・リー監督だってやろうと思えば「うわぁぁぁ!あぢあぢ! 肌焦げる〜」って画面を作れたはずなんですが、漂流中は意図的に暑さを感じさせない画面に仕上げています。しつこいけど。
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アンリ・ルソー(1844-1910)
ついでに、虎が還っていくジャングルはルソーの絵っぽいね。
ルソーの代表作といえば双璧はこの2作。

『戦争』1894年


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『眠れるジプシー女』1897年

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あとジャングルの絵を好んで多数描いていて、ジャングルなので虎もいます。
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『虎とバッファローの戦い』1908年

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『夢の庭』

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ルソーは熱帯に実際に行ったことはなくて、熱帯植物園で見て、あとはイマジネーションで自由に描いているそうです。植物学的には現実と合致しない不思議なジャングルです
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『夢』1910年

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で、ジャングルの中に蓮の花? のような花がよく描き込まれていまして、う〜〜〜ん、虎と蓮の花か〜、いや、早合点やこじつけはよくない。睡蓮じゃなくてサボテンか何かの花かもしれないぢゃないか? と、慎重になったのですが…
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どうよ、コレ
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『フラミンゴ』1907年

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蓮の花ですね〜、ピンクフラミンゴですね〜.
んで、こんな絵まであった。
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『嵐の中の船』1896年以降?

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好きなんスか? 監督、ルソー好きなんスか?
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ご、誤解しないでよねっ ただの偶然の一致なんだからねっ
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失礼しました。
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これらも、18世紀後半〜20世紀はじめ、世界がいろんなものの見方を見直しはじめた時期の絵なんです。伝統的な「線」の取り方をいっぺんリセットして、光の洪水のような、線を廃した絵:印象派 から、再び、自分自身の見方で線をつかみ出しはじめるのが後期印象派〜野獣派。
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次回【3Dの絵画】へ つづく
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