ライフ・オブ・パイ専用ザク格納庫

映画ライフオブパイの超長編ネタバレ/その他映画のレビュー/あと気がむいたときに羽生くんを応援

ライフ・オブ・パイ

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このブログは映画『ライフ・オブ・パイ』の、激ネタバレ レビューです。
映画をまだ観ていない方はご遠慮ください。
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すでに作品を鑑賞済みの方は、
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↓スタート
2013年10月30日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131030
2013年10月31日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131031
2013年11月01日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131101
2014年01月25日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20140125

…以下、カレンダーか記事の一覧から
2014年4月〜 の順にお進みください。.
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【総括:親子の確執】
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一眠りして正気に戻って、昨日(〜11/16)の記事を読み返して、な、何が言いたいんだと、核心の周囲をぐるぐる駆け回っているだけで、核心に近づいてもいないじゃないかと。
書いた本人がそう思うんだから、読んでる人はもっとイラっとしているだろうな。
すみません眠かったんです、とてもとても眠かったんです。
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(どんなに眠くても熱が39度あっても締め切りまでに一定水準の原稿仕上げるんだからプロ作家ってすげーよなーと素直にリスペクト)
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思い出しました。結論として何が言いたかったのかというと、
アン・リーは別に親孝行奨励の映画なんか創っていないと思います。」
ってところに、話をもっていくつもりだったんです。でした。
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映画レビューの投稿サイトとか覗くと、この映画を最初っからけなすことに決めているような敵意満々の作文が結構あります。
アン・リー監督が台湾出身だということで、反日と思いこんでいるような連中には何を言っても無駄だろうけど、(そういう連中はこんなブログなんて読まない)
もしか『ライフ・オブ・パイ』に、かんどーてきな親子愛の説教臭さを嗅ぎとって警戒しているのなら(←ある意味鋭い感性と言えるかも)、それは杞憂だと言いたかったのです。
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1コかんどー的な親子愛の例があると、すぐ尻馬に乗って、「それに引き換えお前らは」とか説教したがる奴が出てくるけど、ウザい!
この映画は、主人公と父との和解や、父の愛(自己犠牲)がメインではあるけれど、同時に、対照的な《ミニョネット号事件》を配置してあって、その他、三位一体説、『異邦人』にみる親子の情を強要する社会通念(への反発)、ジータの両親の態度(←ハンムラビ法典の解釈と同じ)等々
様々な親と子の有りようを提示し、親子関係の見直し、親たるものはどうあるべきかを模索している。
「親」と名が付きゃ、どんな親でもありがたがって孝行せにゃならんよ、とかそんな説教予定の映画ではあるまい、と思うわけです。
実際、監督の前々作の『ブローク・バック・マウンテン』は、主人公を苦しめ続けるインナー・ファーザーからの離脱が裏テーマだったし。
このブログの広告に、アン・リー監督の作品のDVDが時々載るけど、その中に「父親三部作」ってのがあって、(まだ観てないんだけど)、親子関係の模索が作家的テーマの一つなんでしょうかね、アン・リー監督にとっての。
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ほんだから、おとんやおかんが「お前もパイを見習え」とかゆーてきたら「その前にサントッシュやジータを見習え」と言い返してかまわないと思うわ、私は。
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ほんで、親子喧嘩のときなど「親のせいにするな」というのは決まり文句ですが、(考えなしの説教屋もよく口にする)、
「責任転嫁」と「原因の追究」を混同しないでほしい。
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映画はその気になれば何度でも観ることが出来る。さらにディスクを買えば、気になる一瞬をスローでじっくり観たり、シーンからシーンに飛んで、伏線の係り結びを確認したりできる。1度目に観たときにはわからなかったことも見えてくる。
それさえできない観察力不足、理解力不足のくせに、よそんちの家庭の事情に口出しして説教して優越感に浸りたがるとか、おこがましいにもホドがあるわ。節穴同然の目ぇした奴に限って「え〜全然そんなふうに見えな〜い」とか平気で言いやがるし。
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けど、家族愛の作品を引き合いに出して説教する奴らがウザいんであって、家族愛そのものはウザくない。自分の手には入らない宝物だったとしても、宝物はあったほうがいい。『ライフ・オブ・パイ』は、そういう宝物です。
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それに見方を変えれば、サントッシュとジータみたいな理想的な両親に恵まれてたって、反抗期ってのは必ず訪れるもんなんですよ。脱皮と同じで子供の成長に必要なことだから。
まともな親ならそのくらいわかっている。
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が、大人社会でまともに相手にされない、箸にも棒にも引っかからないような奴がうっかり親になってしまうと、我が子にだけは威張れる、と思いこんでいるから「お前まで俺をバカにするのか」「○○ちゃんだけはママの味方のはずでしょう?」とか、子供の反抗を侮辱とか裏切りと見なすんですわ。子供を人間じゃなくペットや家畜みたいに考えているから「飼い犬に手を噛まれた」なんて平気で犬呼ばわり。口げんかで言い負かされたことを何年も執念深く覚えていて、親に逆らった罰を与えようって、機会をつけねらっている。単なる感情的な報復にすぎないのに「罰するのは親の義務だ」とかw
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結局、親子の確執が、一過性の反抗期なのか or 毒親から逃れるための死にものぐるいの抵抗なのか 第三者がおいそれと判別できるものではない。
にもかかわらず、安易に口出しする奴が多いこと多いこと。
頼まれもせんのに口出しして、得意げに説教しておきながら、イザとなると「事情を知らなかったから」って謝りもせんと逃げる。こういうのも責任無き権力の一部ではないかと。
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バラエティ番組でも取り上げられて「毒親」というワードも世間に認知されつつあるようだけれど、逆に安易な流行語みたいな使われ方をすると問題がスポイルされる危惧もある。
「セクハラ」がそうだったでしょ。今なお改善されないセクハラ問題が山積している一方で、男達をやっつける呪文みたいに「セクハラ〜セクハラ〜」ってハシャいでいる不心得者がいたので、「なにがセクハラだ女共め」って反感をかって、ほんとに苦しんでいる被害女性からの訴えまで軽視されるようになってしまった。
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反抗期の親子喧嘩ぐらいのことで、流行語?の「毒親」を安易に持ち出さないでほしいし、安易な毒親認定も危険だな、と思います。
ガチの毒親は立ち回りがうまいので、ネット上の「毒親の見分け方」等は、すぐにクリアして世間を誤魔化すようになる。
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とにかく、本気で首突っ込む覚悟が無いなら、生き死にに関わる問題を安易に扱うな。
プロのカウンセラー並の仕事を1年も2年もかけて無償でやる覚悟がないならば。
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ただ、これまでは、毒親の被害児は解決策を相談する相手もいないし、その前に被害状況をさえわかってもらえない時代が長らく続いてきて、(話始めたとたんオヤノセイニスルナーに説教される)、
TVやネットで毒親問題が取り上げられたことによって、「親が子供を愛さないはずがない」などという偏見の壁に突破口があいたのは良いことだと思っております。TV偉い!TVさすが!ネットもすごいな!立派だな!  こんだけ言っときゃいいか
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【余談】
ジータの両親の態度(←ハンムラビ法典の解釈と同じ)

と書いた部分、別に説明の必要は無いかな。と思ったけれど一応。
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気がつくと自分が年とっていて、平成生まれの人と、常識とか歴史認識にズレが生じているようなので、「このくらいわかるよね?」が通じないかもと不安になっちゃうんですよ。
読んですぐわかった人は以下は読まなくていいです。
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ハムラビ法典は古代バビロニア帝国でどーたらこーたら…(教科書で習うようなことはWikipediaとかで)
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で、ユダヤ王国がバビロニアに戦争で負けて、(バビロンの補囚)、早い話、旧約聖書ではバビロニアは「背徳の都」と思いっきり悪者あつかい。
後、バビロニア帝国の支配圏が、イスラム教の勢力圏になったこともあって、(ハムラビ法典イスラム教は直接は関係ないんだけど)、キリスト教徒の白人社会では、ハムラビ法典はやたら悪く言われることが多い。
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曰く、「目には目を」、復讐のための残忍な法律。
同じ傷害罪でも、貴族同士の場合と、貴族vs奴隷の場合では刑罰に差がある、身分差別を正当化する法律、etc.
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新約聖書にも、イエスが弟子達に「目には目を」であってはいけない、と復讐心を戒める箇所があるので
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けど、はなはだ不完全ではあるけれど、ハムラビ法典は有史以来、初の、成文化された「最高権力者からの部分的な権力の譲渡」と私は学校で習ったぞ。いまの高校のカリキュラムではどうか知らんけど。
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法が制定される以前は、立場が強い人は気が済むまで弱者を痛めつけることが可能だった。機嫌が悪いヤー様とうっかり目があっただけでボコられる、下手すりゃ半殺し、武士の面体に泥を塗ったから切り捨て御免とか、文句があるならベルサイユへいらっしゃい的な、際限無く踏みにじられるところを、高倉健さんみたいな、人間が出来た兄ィが「おい、もうそのへんでやめとけ」と止めてくれたので命拾いした…ハムラビ法典はそんな法律です。
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奴隷が過失で貴族の目をつぶしたとしても命までは取られない保証ができたのだから、人類史上画期的なことなんです。
それを口約束のウヤムヤではなく、粘土版に楔型文字で刻んで、後代に残した。
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湾岸戦争のドサクサで、その粘土版が博物館から略奪されて行方不明になったとニュースで聞いて、もしやCIAの陰謀では? と疑ってしまいましたよ。その後、見つかったってニュースを私は聞いてないんですけど、見つかったんだろうか。いつの間にか無かったことにされちゃって、欧米の白人が主張する「ハムラビ法典=野蛮」が通説になっちゃうんだろうか。
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つづく
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ハムラビ法典に関して続くわけじゃないです。
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次回は【アン・リー監督のギャラリー】
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ちょっと映画そのものから離れすぎましたので反省して、スクリーン上の映像美について。
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