ライフ・オブ・パイ専用ザク格納庫

映画ライフオブパイの超長編ネタバレ/その他映画のレビュー/あと気がむいたときに羽生くんを応援

ライフ・オブ・パイ

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●オープニング・テンプレ●●●●●●●●●●●●●●●●●●
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このブログは映画『ライフ・オブ・パイ』の、激ネタバレ レビューです。
映画をまだ観ていない方はご遠慮ください。
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すでに作品を鑑賞済みの方は、
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↓スタート
2013年10月30日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131030
2013年10月31日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131031
2013年11月01日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131101
2014年01月25日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20140125

…以下、カレンダーか記事の一覧から
2014年4月〜 の順にお進みください。.
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【家族の肖像】
ジータの家柄の設定も映画のオリジナルです。
パイからみれば、母方のじーちゃんばーちゃんの話。
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ナレーションによれば、
娘を大学で学ばせるほど進歩的な親かと思われたが、娘が身分が低い男と結婚したため勘当してしまった。とのこと。(一字一句丸暗記してる訳じゃないので。でもそういう内容だったでしょ)
この語順だと、ジータの両親ちっさ!心せますぎ!って印象ですが、見方を変えると、勘当する以上のひどいバッシングはしてないってことでもあります。
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スクリーン上のパテル家の描写は、大富豪ではないけれどまずまずの生活レベル。動物園の従業員だけじゃなく、家事手伝いの使用人もいるし。そんだけの甲斐性があっても身分が低いって結婚を許さないのは、どんだけ上位カーストなんだろなジータんち。
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パテル家が順調だったのはサントッシュが有能だったせいではありますが、それでも、上位カーストの権力・影響力を駆使すれば簡単に潰せたはず。
実社会では、斬新な優れものの企画が「ちょっとね〜なんというかこーゆーのは実状にそぐわない…」とかムニャムニャな理由でボツにされて、凡庸な安牌の企画が採用されたりってことがザラにあります。こういうのはもう社会人あるあるです。多少なりとも世の中を知ってる人なら心当たりの一つや二つあるでしょう。
後ろ盾があるか無いか、お偉いさんの気に入りか、機嫌ををそこねるか、そんなんで決まってしまう。
「あの男はちょっと問題のある人物でねぇ…」なんて理由をはっきり言わず悪印象をふりまいて、真綿で首を絞めるような妨害を続けていたら、いかな優秀な事業家だって頓挫してしまうわ。
星新一氏の『人民は弱し 官吏は強し』みたいに。あれ実話だもんね〜。読んだ後ジャンケンが全部グーになっちゃうほど腹立ったわ。
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脱線
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だからジータの両親も、やろうと思えばサントッシュの事業に圧力をかけて困窮に追いやり、飢えた娘が打ちひしがれて帰ってきたら勝ち誇って完全に支配する、ということもできたはずなんです。
でもそういう卑劣なまねはしなかった。
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勘当したのは、世間に示しをつけるためで、むしろ娘を守るためではなかったかと思います。
カーストが絶対的な影響力を持つインドで、身分違いの結婚を容認していたら、身内でもない赤の他人が「社会の秩序を乱した」っていらんちょっかい出してくるかも知れない。
ちょっかいで済めばいいけど、もっとひどい制裁になるかもしれない。
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カミュの『異邦人』のように、母親の死に涙しなかった と、社会通念に抵触しただけで、殺せ殺せと叫ぶ外野がいる。イエス・キリストの死刑判決と同じ理由です。げに恐ろしきは大衆の暴力)

カースト絶対で、男尊女卑で、女の子の嫁ぎ先は親の一存で決めるのが当たり前の1950年代のインドです。地方豪族とかになると、娘さんが親の奨める縁談を嫌がっただけで、一族の恥 呼ばわりされて、親や親族の手にかかって闇から闇…なんて例があるのですって。
21世紀に入ってからでもときどき人権保護団体が告発してたりとか。ザザンボか。
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インド全体が政情不安になるまでは、パテル家の動物園経営は順調だったわけだから、実家の祖父母は妨害めいたことはしなかったんだと思うし、むしろ影ながら娘夫婦を守っていたのかも知れません。
そういう順番で考えれば、やっぱ娘に高等教育を受けさせるだけあって、ジータの両親は進歩的で寛容な人達だったのでは? と思えるのです。
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ジータはそういう家のお嬢さんで、身分もなにもかも捨てて嫁にきた。
サントッシュは断固たる態度でことにあたるけど、妻子の菜食主義を尊重して肉食を強要したりしない。俺色に染まれ!とかいう横暴な男ではないし、ジータも「獣の肉を食べた口で私にキスしないでちょうだい」なんて言わないんだよね。
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実際、作中のサントッシュの叱り方は、躾の模範だと思います。宗教に関して、親の説教の直後に息子が「洗礼を受けたいんだ」と言ったときは腹を立てたりしないんです。威張りたがりの親なら、親をナメてんのかみたいに激怒するところでしょうが。
きつく叱ったのは息子の命が危なかったとき。しかも息子が危機感無く同じコトを繰り返しかねないときです。
子の命を守る躾であって、親に逆らうなという隷属を促す折檻とは真逆です。
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パイはそういう家庭で育っている。

つづく
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