ライフ・オブ・パイ専用ザク格納庫

映画ライフオブパイの超長編ネタバレ/その他映画のレビュー/あと気がむいたときに羽生くんを応援

ライフ・オブ・パイ

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●オープニング・テンプレ●●●●●●●●●●●●●●●●●●
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このブログは映画『ライフ・オブ・パイ』の、激ネタバレ レビューです。
映画をまだ観ていない方はご遠慮ください。
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すでに作品を鑑賞済みの方は、
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↓スタート
2013年10月30日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131030
2013年10月31日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131031
2013年11月01日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20131101
2014年01月25日→http://d.hatena.ne.jp/chap-chap3/20140125

…以下、カレンダーか記事の一覧から
2014年4月〜 の順にお進みください。.
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おwび
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また、だいぃぃぃぶ間があいてしまってごめんなさいまし。
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前回ラストのあたりでワタクシ妙におこってしまって気持ちの建て直しに困りました。
無理解な知ったかレビューが多くてすっかり腹を立ててしまったわけですが、
………すみませんでした、
こんなクソ長編レビューを根気強く読んで下さってるありがたい読者様に怒りをぶちまけたってしょうがないのに。
我ながら修行が足んねえわ。
こういうのってー、朝礼での校長の説教と同じで、熱心に耳を傾けてくれるのは今更そんな説教なんか聞く必要の無い、モノのわかった人達。逆に「おまえだおまえ! おまえに言ってんだよホラ!今横向いて欠伸した前から3列目のおまえ!!!」というような奴は絶対聞いちゃいねえのだった。
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誰を対象に、何のために書くのか、虚しくなってしまったのでございます。
ここまで読んで理解して下さった方ならこれ以上クドクドいわんでも、もうあとはわかるやろとなげやりに。
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まあ、でも、逃げたとか誤魔化したとか言われんのもシャクだし。
とりあずアン・リーとデビッド・マギーと役者さん達のために書くよ。
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【ビシュヌの島】の数々の象徴的なモチーフに関しては、このあとちゃんと書きます。
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間があいちゃったんで、書く順番を変更して、
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【三面図】
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以前に、
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 f(x)『虎の話』
 g(x)『コックの話』
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この二つの関数から原型xを解き明かす。
と比喩で解き方の道筋を説明しました。
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あるいは、
「右目」と「左目」の視野のズレから、立体感を感じ取るという比喩で。
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でも、ほんとは「3D」だから、絶対にはずせない3つめの要素がある。
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パイが生き延びて幸せになっているという、中年パイの現実です。(映画の中の現実ね)
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●『虎の話』
●『コックの話』
●『愛する家族と幸せに暮らしている中年パイ』
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この3つを同時に満たす解を求めよ。という出題。
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ここまで条件を絞り込むと、迷うほどたくさん選択肢はないので解くのは楽ですよ。
227日間の漂流中になにがあったにせよ、それは、パイから幸福な笑顔を奪ってしまうような出来事ではなかった ということです。
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解き方間違えて虚数解に行っちゃって、殺人犯がハッピーエンドかよ!とか、パイは食人鬼・サイコパスとかの妄言も飛び交ってますが、たたき上げの実力派監督が、観客をだまして陰でほくそ笑んでるような悪意の映画なんか撮りませんよ。映画制作には大勢の人がかかわってるんですから個人の悪意がそのまま反映されるわけがない。
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って、嗚呼、また私ちょっとおこに…
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つまりね、3面図です。
立体を想起した設計者が、「正面」「真横」「真上」からみた3枚の図面を書く。
3面図を読みとった受け手は、設計者の脳裏にある立体を理解する。
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実際に手に取れる模型などなくても、お互い同じビジョンを脳内に共有していることを前提に、
「なるほど、こういう立体ですか」
「そう、こういう立体です」
と会話が成立する。
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あまりにも複雑な立体だと、設計の専門家同士でないと無理だけれど。
(宮崎監督の『風立ちぬ』は素晴らしかった。道を究めた者同士の相互理解。設計図を見ただけで飛翔のさまや翼をよぎる空気の流れまで想起できるビジョンの共有。
決して荒唐無稽な作り話ではなく現実に起こりうることです。
楽家は楽譜を読んでオーケストラの音色を聴くことができるし、もっと日常的な例では、料理し慣れた人なら簡単なレシピと作り方を読めばおおよその仕上がりや味を想起できる。)
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人間にはそういうコミュニケーションが可能なんです。
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「頭の中で想い描いたこと」というのをすべてあやふやで、あてにならないものと思いこんでいる人もいるけれど、推理・洞察・類推でつかんだものは、そんないい加減な、解釈しだいで千差万別などというテキトーなものではないのです。
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この『ライフ・オブ・パイ』という映画のすごいところは、スクリーン上にあるものは映画そのものではなく、アン・リー作品にたどり着くまでの宝探しの地図。
アン・リーが想起した世界の3面図である、と言う点なのです。
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駆け出しの映像作家が一生の目標に据えるような映像美を展開しておきながら、スクリーン上の絵はアン・リーにとっては布石に過ぎないという圧倒的な実力差。
私が同業者だったら嫉妬で殺意を抱いてしまいそうだが(アマデウスサリエリみたいに)、でもただの観客なので素直に大絶賛さ。
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ちょっと面白かった、結構感動した、ぐらいで「世紀の傑作!」なんてぶちあげてしまうと誉め言葉のインフレになっちゃうよ〜ん なんて茶化しが聞こえてきそうだけど、うるせぇ! こっちだって昨日今日生まれたわけじゃねぇんだ。
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こんな構成の映画、未だかつて無いわ。
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ある意味、従来の映画表現へのアンチ・テーゼでさえある。
従来の映画はスクリーンに真実を映し出すために工夫を凝らして表現してきたが、アン・リーはこれでもかというほど鮮烈な映像美を見せつけておいて、「スクリーン上にあるものは真実ではなく影にすぎない。真実はここではないどこかにある」と誘う。
プラトンイデア論です)
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一番肝心な点、アン・リーが描こうとした中身は、映像でも台詞でも描かれていない。
描かないことを描く映画。
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空白の部分を知るには、目に見えるものをつぶさに追っていって、
(真っ先に目に飛び込んでくるモノ、誰でも気づく事柄 だけでなく、見逃しがちな一瞬、視界に映っていたはずなのに気付かなかったシーンetc.)、
そうやって詰めていくと、空白部分のアウトラインが次第にはっきりして、空白が描く中身が見えてくる。
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「見えるもの」を駆使して、「見えないもの」を観せる映画。
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ちょっとしたバックストーリーや空白の内面を、観客自身に補完を求める作品なら従来もありましたよ、ええ。
事実、アン・リー監督の前々作『ブロークバックマウンテン』でも同じ手法が使われていたし。
ただ、『ライフ・オブ・パイ』ではその手法がとことん極められて、二つの劇中劇は空白部分をおおい隠し、空白に気付くところからスタートしなければならないという究極仕様だ。
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カリガリ博士』とか『イントレランス』の革新性に比肩する、映画表現の新たな1ページを切り開いた作品です。
むこう100年、これを越えるクォリティの作品が現れるかどうか。
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エンドロールが終わって客電がついても、そこで映画が終わりにならない。
観客は、3枚の地図を手にして作品世界の入り口に立ったところにすぎないんです。
227日間の空白を解いて、パイと同じ記憶・同じビジョンを観た上で、もういっぺんフィルムに戻ってきて、中年パイの台詞、ライターと対峙したときの表情、細部まで行き届いた演出や伏線や心理的トリックの意味を知る。
そこまで観てようやくこの映画を観終えたことになるんです。
時間かかるけど。コスパ最強。永く久しく楽しめます。
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【バックストーリー】
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レビューはまだまだ半分もいってないのに、なんかすっかりマトメに入っちゃってるような書きっぷりですが、ここまで説明してきたストーリーは、決して個人的な空想や、自分好みの二次創作などではないということを念を押しておきたいのです。
(私にはそんな創作の才能なんかないんだってばさ)
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クランク・インのずっと前に、アン・リーとデビッド・マギーがタッグを組んで、実際に主人公は誰とどのように漂流したかの裏台本をちゃんと仕上げてある。
メインキャストの役者さん達はその裏台本にそって227日間の漂流をリハーサルして共通のビジョンで役作りをしてから撮影に臨んでいる。
現場にもぐりこんでいたわけではないので、イメトレ程度のホンヨミなのか、特設プールのボート上の立ち稽古までやったのかは断言できないけど。
(でも限られたスタッフのみ立ち会いのシークレット・リハーサルはあったような気がするな)
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漂流中の悲惨な出来事。あまりにもあっけない母の死。父とのマジ喧嘩。海に落ちた父を救助する場面。父と心が通いあう日々。
パイ役のスラージ・シャルマと父サントッシュ役のアディル・フセインは、ボート上で実際の227日を演じ、中年パイ役のイルファン・カーンは、そのリハーサルに立ち会い、「16歳当時の記憶」を脳内に形成する。
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病室のシーンでは、スラージ・シャルマはシークレット・リハーサルの家族との漂流を脳裏に浮かべながら、口ではコックと船員がいた作り話をする。
中年パイは、父に対する言葉にできない思いを『虎の話』に託して語る。
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そうでなかったらああいう表出にはならんのです。
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私が【真相】としてここまで書いてきたのは、アン・リーとデビッド・マギーが書いた裏台本の中身を推理したものなので、「自分なりのイメージ」とか、作品の後に続く「二次創作」ではありません。
作品に先立つ設定の推理です。
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と、先走ってしまったが、少し前にもどって、【ビシュヌの島】のモチーフについて。
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明日に続く
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