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映画ライフオブパイの超長編ネタバレ/その他映画のレビュー/あと気がむいたときに羽生くんを応援

JW2→七人の侍、他、盛り沢山

【雨天決闘】

ジュラシックワールド2 炎の王国』の中で、印象深いシーン、盛り上るシーンは数々ありますが、屋根の上の決闘はバヨナ監督の力がこもってて見ごたえがあります。
つまり作家としての作意性、組み立て方。

雨 降ってます。にわか雨。

オークションに客が集まってきた頃や石頭大暴れで客達が逃げ出した頃もまだ雨は降ってない。
インドラプトルとの決闘シーン限定で雨。

これは黒澤明監督の『七人の侍』がベース。

黒澤監督が 『七人の侍』を撮るにあたって、
「(本場ハリウッドの)西部劇に負けない大活劇をつくろう ………西部劇には雨がない、野武士達との決戦のシーンは雨にしよう。」
という流れだったそうで、(これは昭和の映画ファンにはわりと有名な話)
それを踏まえて、バヨナ監督は雨を降らせた。
というか、ロックウッド邸を北カリフォルニアに設定したんだと推察します。
メキシコ近くの南カリフォルニアだつたら雨は降らない。ほぼほぼ。
んで、ほかの土地なら雨は降ってもあたりまえ。
降りそうで降らなさそうで、でも、北カリフォルニアならたまに降ってもあり得ない話じゃないよね、って 絶妙なコントロール

話はそれるけど、鳥山明先生の『ドラゴン・ボール』で、悟空さが青年バージョンで登場する天下一武道会でも雨降ってましたね。DB初雨。
(原作漫画のほう。アニメは観てない)
インタビューによると、雨降らせると定規使わなきゃならなくてアシスタントさんが大変だから、今まではずっと晴天ばかりで、でも、ここいちばんの悟空さ再登場を印象付けようと、雨にした、のだそうで、ジャンルは違えど、巨匠は天候ひとつ取ってもおろそかにせんのだなと感服いたしましたしだいです。


屋根の上の決闘だから、雨では滑りやすくて危険度UP、観客ハラハラ という効果も無論ある。

が、この場面は、インドラプトルの象徴性や、巨匠へのリスペクトのほうが比重が大きいのでお見逃し無きよう。

以前、この作品のレビューのしょっぱなに、上下の移動、カメラワークがミソ、と書きましたが、こころに止めてくれた人いるかしら。



続く





続いた

【 はじめてのお外 】


インドラプトルは屋根のてっぺんで雄叫ぶけど、あれ、わ~い お外だ~ ってはしゃいでいるのかと思うとかわいいな 。

インドラは『エイリアン4』のニュ・ーボーンを踏襲してますよね。おぞましいのに妙になつきたがりで、うっかりすると“かわいい”と思ってしまうあたりが。


このシーン、アラ探し的に見ればおかしいんです。
ずっと狭い檻の中で飼育されていたのなら距離感が形成されないから暗殺獣にはなれません。
 『ジュラシックパーク 1』のヴェロキラプトル達や『ジュラシックワールド 1』のインドミナスレックスのエリアみたいに、狩りを学ぶためには十分な広さが必要た。

これは作品の“欠点”とみなすのではなくて、
映画の制作者側は、暗殺獣の飼育なんて本気で計画していない
と読むべき。

描こうとしているのは、生物兵器に暗殺を仕込んで、それを商品化しようとしている奴らの姿なんです。

で、上下の移動ですが、インドラプトルは地下から屋根まで上がってきて、壁を(Gみたいに~)上から這ってメイジーの部屋に降りてくるんです。

そのシーンのカメラワークはぐるっと一回転。
下からインドラが壁を登ってくるように見せかけて、実は上からでしたー、と印象付ける演出。

あれだけの大きさ&重量のあるインドラが、ヤモリやG みたいに、垂直の壁を上から下に這い降りてくるなんてあり得ないんです。 
それをあえて、カメラ一回転させてまで強調しているのは、作り手が、インドラを架空の、邪悪の象徴として描こうとしているから。
Tレックスヴェロキラプトルもライオンも狩りはするし、恐ろしい肉食獣だけど、邪悪ではない。
人間の手が加わったハイブリッド種とはそこんとこが違う。 
ターゲットを指定されれば、理由も問わず執拗に追い回し、どこまでも追い詰めて殺す。『激突』のトレーラーのように。

ジュラシックワールド』にタイトルが変更されてから登場したハイブリッド種の恐竜は、一部のレビュアーにはずいぶん不評みたいなんですが、スピルバーグ監督は、子供達が大好きな恐竜を悪者にしたくなかったんだよ。たとえ肉食のおっかないTレックスアロサウルスでも。
肉食獣が狩をするのは、彼らにとつて必要なことだからであって邪悪ではない。獲物になるのは嫌だけど。

それとは裏腹に、草食だから安全・フレンドリーとは限らない。(シノケラのおばさん   いい人だったけど)
火山の島からみんな必死に逃げ出すときは、草食竜の巨体だって脅威だ。現存する牛や馬だって、豚の群れだって、暴走したら力石つれてこなけりゃ収まりがつかんのじゃ。

再三 繰り返される「人間と恐竜は共存できない」っていう一貫した主張。今回は人間を喰わない草食の恐竜でも例外ではない、という描きかたをプラスアルファ。
肉食獣は規制して、草食はお咎め無しで牧場で飼育、とかにはならんと思います。

にもかかわらず、ハイブリッド肉食を遺伝子操作して暗殺獣として商品化するとか、オークションで売るとか、学習能力ないのか あいつら。

そんな色々な含みを持たせた今回のインドラとの決着ですが、クライマックスのガラスドームから墜落するシーンが象徴性の白眉。  

しつこく繰り返すけど、ガラスも鉄線も踏み破る重さのインドラが、Gみたいに壁を這い降りたりしませんから。(Gだったら飛ぶし、天井を逆さに這い回ったりするわけで)
オーウェンの銃もダメージ与えられないくらい頑健なボディだし。

それと、物語の中での設定ではどうなってるのか詳細は不明だが、あのドーム、まったくの新築にしては脆すぎる。アメリカの古都フィラデルフィアあたりから、年代物のアールデコのドームを解体して、北カリフォルニアで組み立てた、とかじゃないのかな。所詮 金持ちの道楽よ。
前世紀の遺物。ベンジャミン・ロックウッド老そのもの。

クレアはロックウッド老から手を差しのべられて、これで恐竜達にも明るい未来が…、と安堵していたが、あのガラスドームは、結局は、恐竜の重みに耐えられない、キレイキレイなお花畑の理想に過ぎなかった。ってことじゃないのかな 。

そのほか、あのロックウッド邸に舞台を移してからは、巨匠の過去作からの引用や含みを持たせたシーンが多くて、くっそおぉぉバヨナめぇぇぇ盛り込み過ぎなんだよもぉぉぉ(牧場かっ)   ぶーぶー。


次は、いよいよヴィスコンテイの『地獄に墜ちた勇者ども』です。まだ未観賞の人は観といてください、できれば。
最初っからネタバレ全開でとばしますから。 
あと、『地獄…』を語る上で外せないので、同じくヴィスコンテイの『山猫』にも触れます。

本作『ジュラシック・ワールド 2 炎の王国』のはじめの方で、クレアとオーウェンがプールバーで一杯やるシーン、

クレアがフロア中に響きわたるようなけたたましい笑い声をあげるでしょう?
あれ、『山猫』でアンジェリカ(クラウディア・カルディナーレ)が笑う声とそっくりなんですわ。偶然かな。

できれば、できれば、できればー『山猫』と『地獄に墜ちた勇者ども』観といてくださいねー。どっちも名作です。

『山猫』はともかく、『地獄…』は、おもいっきり鬱展開なので、(だ~れも幸せになれない)、せっかくのG・Wにオススメするのは人としてマチガッテルのではあるまいかと思いはしたが、連休後の5月病のシーズンやさらに梅雨入り後はもっと不適切かと。  

今年、年明けから3~4月ぐらい、(今も?)連日ニュースで鬼畜親に殺された被害児の件、報道されてましたが、『地獄…』も、どうしようもない毒親の話なんで、ずっと、ブログでは別件を更新しつつ、早く話を進めたいなぁと思っておりました。

死ねよ毒親
『地獄…』では、ラスト、見事にくたばりやがります。あのシーンだけはスカッと爽やか。


続く